兄妹の子供をもった女の人がおりましたが、この人はまた、兄妹の継子をも持っていました。この人は邪悪な性質だったので、自分の子供は可愛がるのに、継子の兄妹には食事もろくにさせませんでした。
お腹をすかせた兄妹は、飼っていた牝牛を可愛がって、自分たちに与えられたほんの少しの食事を分け与えてはこう言いました。
「僕らのお母さんが親切だったように、僕らに親切にしておくれ」
すると、ある日 牝牛が口をきいて、兄妹に食べ物を出してくれたのです。それ以来、兄妹はお腹をすかせることはなくなりました。彼らのお母さんが生きていたときと同じように。
継母は本当に邪悪だったので、継子たちが元気になったのを憎みました。そこで、自分の二人の子供たちに秘密を探るように言いました。
二人の子供のうちの兄は、牝牛の秘密を知りましたが、継兄妹たちに牝牛の食べ物を分けてもらったので、秘密を漏らしませんでした。次に妹が秘密を知りましたが、彼女は母親によく似た邪悪な性質だったようです。彼女は口止め料にお菓子を分けてもらって、けれどそれでわざと服を汚し、母親に秘密を告げたのです。
継母は仮病を使い、愛人を医者に仕立てて、継子たちの養っている牝牛を食べなければ治らない、と夫に言いました。夫は、妻に愛人がいることも、これほどに邪悪な性質であることも知りませんでした。あるいは、知っていながらも従っていたのかもしれません。牝牛はすぐに殺され、継母のお腹に収まりました。
牝牛が殺されて、継子の兄妹は泣きました。継母は、食べ残しの骨だけを子供たちに返しました。継子たちは骨を焼き、灰を壺に入れました。せめて身近に置いておきたかったのかもしれません。
ところが、骨壺からアロエの木が生えてきたのです。
アロエの木は大きくなり、沢山の実がなりました。子供たちはその実を食べ、汁を飲んで、もう飢えることはなくなったのです。そして神様を讃え、幸福に暮らしたのでした。
参考文献
『世界のシンデレラ物語』 山室静著 新潮選書 1979.
※この話を読んだ時の感想。
……アロエって木になるのか。
スウェーデンのルース女史によると、この型の話は西アジア、北アフリカ、インドネシアに分布しているそうで、まず近東で発生し、このサイトで[牛とシンデレラ〜魔法の果実]として示している型に 西欧で変化したのだろうという。更に面白いのは、これと「耕狗田」――私たちの言うところの「花咲爺」を関連付けていることだ。
参考--> 「継子たち」
三人兄弟があり、長兄は一つ目、次男は二つ目、三男は三つ目だった。父は早くに死に、母が三人の息子を女手一つで育てたが、どういうわけか次男には辛く当たった。いつも腐れかかった冷たいご飯を与え、冬にも薄い着物しか着せない。しかも辛い仕事ばかりさせていた。
彼は毎日牛を追って草原へ行き、夕方になると帰ったが、何かと難癖をつけられて夕飯をもらえないことも多かった。母は他の二人の息子に二つ目の後をつけさせ、二人は「あいつは牛の世話もせずに遊んでばかりいる」と報告して、ひどくぶたれた。
そんなある日、空腹に耐えかねた二つ目は、とうとう牛を殺して食べてしまった。残った頭と尾を持って東の丘へ行き、頭を半分土に埋めて
牛の頭よ、牛の頭よ
母さんが来たら三度鳴け
と言い、西の丘へ行くと尾を半分だけ埋めて
牛の尾よ、牛の尾よ
母さんが来たら三度振れ
と言った。そして家に駆け戻ると、牛が気が狂ったように暴れて丘の中に潜ってしまい、今は東の丘に頭が、西の丘に尾が出ているだけだと、いかにも困惑したように言った。母が行ってみると、東の丘では牛の頭がモーモーと三度鳴き、西の丘では尾が三度振られた。母は何を言うことも出来ずに帰った。
次の日から二つ目はあひるの番をさせられたが、やはり空腹に耐えられず、一羽また一羽と殺して食べていって、ついに一羽もいなくなってしまった。あひる小屋の前で明日からどうしようと考えていた時、頭の上を一群のガンが飛び渡って行った。
ガンよ、ガンよ
もう暗い。
ウチのアヒル小屋で一晩休んで
明日になったら飛んでいけ
ガンの群れはあひる小屋に入った。
その晩、母親が「明日はあひる小屋のチェックをするよ。一羽でも減っていたり痩せていたら、ただじゃおかないよ」と怖い顔で言ったが、二つ目は何の心配もなくぐっすり眠った。
翌朝、母があひる小屋の戸を開けようとした時、彼は言った。
「母さん、今開けてはだめだよ。今日はあひるの誕生会をやっている。開けたら、怒ってみんな飛んで逃げてしまうよ」
「何言ってるんだい、この子は。あひるが空を飛ぶわけないじゃないの」
母が戸を開けると、ガンたちが一斉に飛び出て、飛び去って行ってしまった。
次に、母は二つ目に羊の番をさせた。そして羊の数が減ったり痩せたりしないか、厳重に見張っていた。
二つ目は朝早くから羊を連れて山野を歩き回り、空腹と疲れから岩にもたれてうとうとと眠った。目を覚ますと、羊が一頭足りない。山中を探しまわったが見つからなかった。辺りはすっかり暗くなり、思わず二つ目は泣き出したが、その時、羊の尾が地面から出ているのを見つけて、走りよって引き出そうとした。ところが、逆に地面の中に引きこまれた。
羊に引きこまれたのは地下の洞窟だった。先に進んで行くとどんどん洞窟は広くなり、タイルと大理石で出来た立派な宮殿に辿りついた。驚いて見ていると、白いひげの老人が杖をついて出てきて、二つ目に言った。
「お前が羊飼いの少年か。来るのを待っておったんじゃ。お前にこのビンをやるが、何かほしいものがあったら、それを唱えながらビンを右へ回せ。いらなくなったら、いらないと言いながら左へ回すのだ。さあ、羊を連れて家へお戻り」
二つ目が家に帰ると、母が怖い顔をして待ち構えていた。彼は母にひどくぶたれ、夕飯を抜かれた。ベッドに入ったが、空腹で眠れない。その時、老人にもらった小さなビンのことを思い出した。
まずはランプを出し、続いて十皿十鉢の温かいご馳走とご飯を出して、たらふく食べた。ところが、眠っていた母が美味しい料理の匂いで目を覚まして、物陰からその様子をすっかり見ていた。二つ目が眠ってしまうと、母は忍び込んでビンを盗んだ。母は一つ目と三つ目と一緒に食べようと思い、ご飯十皿と八鉢の肉と野菜料理を頼んだ。しかし、ビンを回す方向を間違えてしまい、あっという間に狭いビンの中に吸い込まれた。
母は息も出来なくなって助けを呼んだ。一つ目と三つ目が駆けつけたが、異常事態にうろたえるばかりでどうにもできなかった。ビンの中の母が言った。
「私を助けるんだったら、早く二つ目を連れてきておくれ」
二つ目はぐっすり眠っていたが、話を聞き終わるより早く走ってきた。母はもう窒息しかかっている。
二つ目はビンを手に取ると、「急いで僕の母さんを出してくれ」と言ってビンを右に回した。ビンは窓を突き破って中庭の真ん中へ飛んでいき、その泥の中に潜って消えてしまったが、母は無事にそこに立っていた。
数日して、ビンの消えた場所に金の枝と葉の不思議な大木が生えた。二つ目がその葉や枝を取ると金のままだったが、母や兄弟たちが取ると泥に変わった。それ以来、母は二つ目を虐待するのを止め、三人の息子を平等に愛して、みなで幸福に暮らすようになった。
参考文献
『世界のシンデレラ物語』 山室静著 新潮選書 1979.
※珍しく家庭内ハッピーエンド。儒教的?
でもこういうのもいいよね。ホッとする。
参考--> 「一つ目、二つ目、三つ目」
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