貧しい原住民の母親が美しい娘を三人持っていた。三か月の飢えの月を乗り切るため、まず上の娘が働きに行った。歩き疲れて茂みの無い場所で日向ぼっこしていると、高価な馬具を着けた貴人が通りかかり、何故太陽に背を向けているのか、と尋ねた。疲れているのだ、と答え、仕事を探していることを話すと、自分の家で洗濯をしないか、と言われ、そこで働くことになった。馬に乗せて連れていってくれた。一か月後、銀貨と鞭とどちらを選ぶかと言われたので銀貨を選び、娘は家に帰った。
銀貨を見て、中の娘も働きに出かけた。日向で脇腹を上にして寝ていると、馬に乗った貴人が現われ、訳を尋ねた。このほうが休まるのだと答え、その家で料理人として働き、一か月後にはやはり銀貨を選んで家に帰った。
最後に末娘も出かけたが、姉達は甘えん坊に何が出来るの、と馬鹿にして笑った。それでも出かけて、疲れて日向に眠ったが、頭は四角い布で覆った。目覚めると貴人が立っていて、太陽に恥じることでもあるのか、と尋ねた。それなら自分は岩陰に隠れただろうと答え、姉達のように母親に装身具を買ってあげたいから働きたいのだ、と言った。動物の世話と家の掃除の仕事をした。一か月後、鞭と銀貨を出されたとき、末娘は鞭を選んだ。それは欲しいものがなんでも出てくる魔法の鞭だった。末娘はそれで母親に銀の装身具を贈ったが、姉達は密かに悪口を言った。
部族の大きな祭りの日、姉達はお前は若すぎるし、馬鹿で装身具をみんな母にやってしまい身なりが整わないから、と末娘に留守を言いつけ、母親と共に出かけていった。末娘は埋めておいた鞭を掘り出すと、銀の装身具と服と、銀の馬具を着けた馬と立派な身なりの二人の小姓を出して祭りに向かった。姉達はそれを見て妬み、馬と衣装を奪った。娘が裸同然で藪の陰にしゃがんでいると、例の貴人の息子が通りかかって娘を見つけた。彼はかねてから彼女を見染めていたので、父親の同意を得て彼女と結婚した。
貴人は、この国を治める国王だった。娘は早速一番美しい馬と自分だけの小姓と侍女を四人ずつ貰い、母親だけを屋敷に迎え取った。
参考文献
『世界むかし話集〈上、下〉』 山室静編著 社会思想社
ある山の大きな岩穴をねぐらにする大きな牝牛が、美しい三人の人間の娘を産んだ。牝牛は最初は草や葉を与えるが、子供達は食べない。そこで果物を探して与えた。苦労して娘達を育てたのである。
ある日、牝牛は出かける間際に言う。私が帰ってきて「オパング姫や、ダワンゴ姫や、タリンガエ・アテイ姫や、戸を開けておくれ」と呼ぶまでは戸を開けてはなりませんよ、と。しかし、それを聞いていた三人の男達がいて、だまして戸を開けさせ、それぞれ一人ずつ家に連れ帰って妻にしてしまった。そして村人達には他の村から連れてきたと説明した。
帰った牝牛は娘達がいないのを知って動転して岩にぶつかり、一度は倒れたが、やがて娘達を捜しに出かけていく。そして見つけるが、金持ちの妻となった一番上の娘は(米を乾かしていたが)牝牛を知らないと言った上、竹の棒で打ちのめした。中くらいの金持ちの妻となっていた中の娘も、米搗き杵で牝牛をぶって、牝牛の産んだ人間なんて見たことがないと言った。貧乏人に嫁いだ末の娘は稲刈りをしていたが、泣いて母を迎えて、家へ連れて行き、夫も食べ物や薬を出してくれた。
末娘は姉達の許へ行って、母が来ていること、病気が重いことを告げたが、姉達はそんなことをしたら牝牛の子だと認めることになって世間の笑いものになる、と見舞いにも来ない。やがて牝牛は死んだが、姉達はやはり弔問には来なかった。
牝牛は、自分が死んだら目をえぐり取って家の前に埋めてくれ、と遺言しており、その通りにすると一週間後に珍しい、きれいな木が生えた。葉は金や布で、実は高価な瀬戸物の皿や鉢だった。末娘夫婦は裕福になった。噂を聞いて姉達が訪れ、葉や実を取っていったが、家に帰ると只の石や葉になってしまった。人々は自分の生まれは隠さないようにしようと言い合った。
※一見してシンデレラ話ではないようだが、読めば[牛とシンデレラ〜母牛の骨]のモチーフがたっぷり入っているのがお解りだろう。
参考--> 「南の島のシンデレラ姫」
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