天の岩戸〜太陽や月が、自分の意思で洞窟の中に隠れこもってしまう話群。いかにしてそれを外に誘い出すかが語られる。

>>天の岩戸

翼をもらった月ブルガリア

 年取った夫婦が子供のないことを嘆いている。

 ある夜、川に仕掛けた網に、金色のくちばしと銀色の足をしたかもがかかり、可愛がって育てはじめた。ところが、その翌日から夫婦が森に行って帰ると、暖炉が燃えて食事の仕度がしてある。不思議に思い、出かけるふりをして屋根に登って様子を見た。すると鴨が羽を脱いで娘の姿になり、家事をはじめた。

 二人は娘が授かったのを喜び、また鴨に戻ってしまわないように羽を焼いてしまった。

 それを知った娘は悲しんだ。

 実は娘は月の化身だったのだ。毎晩 老夫婦が子供が欲しいと嘆いているのを聞き、森中の鳥の羽を一本ずつもらって鴨の翼を作り、降りてきたのだ。翼を失っては空に戻れず、夜空は真っ暗になってしまう。

 娘は二人に、森の鳥から一本ずつ羽をもらって、チリレイ谷に住む魔女に鴨の羽を作ってもらうように頼み、洞窟に入った。娘が洞穴に入ってしまったのでその晩は月が出ず、真っ暗になった。

 二人は言われた通りにし、翌日の夕方、ようやく鴨の羽が出来た。娘は翼を受け取ると、洞窟から出て鴨の姿になって飛んでいった。その晩は特別に明るい月が照ったので、人々は胸をなで下ろした。



参考文献
『決定版世界の民話事典』 日本民話の会編 講談社+α文庫 2002.

※全体的には【白鳥乙女】系の話。羽衣を奪われた天女が羽を一枚一枚集めて新たな羽衣を作って帰還する話は、ロシア近辺の民話ではよく見かける。日本の「鶴女房」で鶴の化身の女房が自分の羽を抜いて機を織るのは、この変形なのだろう。

 子供のない夫婦の嘆きを聞いて、月から子供が降りてくる話は、ロシアのバイカル湖近辺にもある。(『バイカル湖の民話』 N.I.エシペノク編、佐藤利郎訳 恒文社『オオカミが月に向かって吠えるわけ』)以下、概略。

 子供のない妻が子供を望んで月に祈り、月は自分の末の娘を遣わす。この娘は働き者だが、羨んだ怠け者の姉二人も勝手に降臨する。三人の娘を得て夫婦は喜ぶ。

 末娘は義母の手伝いをして家事を学んでいくが、姉二人は毎日森に行って遊ぶだけ。しまいに、勝手にクモとオオカミと結婚して、それぞれの獣の姿になってしまう。夫婦は二人の娘を失って悲しむ。

 やがて末娘は鍛冶屋の青年アントンと恋に落ち、結婚が決まるが、姉たちは妬んで、妹を無理矢理ミミズクの妻にしようとする。クモの糸に巻き取られ、オオカミに食われそうになったとき、末娘は月の母からもらった針箱に助けを求める。針箱から針とピンの兵隊とハサミが出て、クモとオオカミを追い払う。

 末娘は無事にアントンと結婚し、月の娘ではなく、オレーニという名で呼ばれることになった。オオカミになった姉は悔し泣きをし、己の不幸を嘆いた。だから、今でもオオカミは月に向かって吠えるのだという。

 基本的に、民話伝承の中では月や太陽は子供を連れ去っていく役回りなので、これらのように子供を遣わす話は珍しい。日本の【かぐや姫】も、あるいはこの範疇に入るのだろうか。思えば、【かぐや姫】も【白鳥乙女】系のモチーフを持っていて、月が鴨として現われたように、類話によってはウグイスの子として現われるし、最後は羽衣を得て昇天していく。

参考--> 「赫奕姫




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