>>【竜宮女房】【金の生る木

竜宮童子

  1. 善良だが貧しい男が水神に出会い、富を授けてくれる素晴らしいものを授かる
  2. しかし、(男/男の妻/夫婦)は豊かになると気持ちが奢り、神への感謝の念を忘れて不遜な振る舞いをする。すると授かった富は一瞬で失われ、生活が元に戻ってしまう。

 発端(1)から始まる系統にはバリエーションが非常に多く、「玉手箱」を授かれば浦島太郎系に、「水や宝が湧き出てくる臼」を授かれば塩吹き臼系に、「獣の声が聞けるようになる呪宝」を授かれば聴き耳系に、「水神の娘」を授かれば竜宮女房系に、「糞の代わりに金をひり出す動物」を授かれば金の生る木系になる。単純に打ち出の小槌や増える黄金をもらって喜んで終わるだけの場合もある。このように、それぞれ異なった展開と結末を迎える。

 竜宮童子系の場合、「何でも願いを叶えてくれる汚らしい子供」を授かることになる。この子供、身奇麗にしてやることは出来ないらしい。ドイツの魔法の壷系の話に、貧しい男が山の妖精から「欲しいものを唱えるとそれが満ちる、黒くて汚い壷」を授かるものがある。(『世界むかし話(全十七巻)』 ほるぷ出版) 女房が妖精の戒めを忘れてこの壷を美しく磨くと、壷は壊れてしまうのだ。

 竜宮童子系のもう一つの特徴は、「感謝の気持ち」を忘れてしまうと、それまでに授かった富が一瞬で全て消えてしまう、という(2)の結末である。このモチーフは国際的には「漁師とその妻」と呼ばれる話型に入っている。「竜宮童子」の場合、水神に感謝されて童子を授かるが、こちらでは網にかかった金の魚を殺さずに見逃す代わりとして願いをかなえてもらう。交換条件である。漁師の妻がどんどん裕福にしてもらった挙句に高慢が極まって「神になりたい」と願うと、それまでに授かった富が全て消えうせてあばら家に戻る。または、妻または男はカラスや熊などの獣に変えられる。

 「漁師とその妻」はドイツが起源だとされているらしい。西欧全域に分布し、スペイン人を通して西インド諸島に、オランダ人を通してインドネシアに伝えられたとされている。日本でも沖縄地方にはこの完全な類話が存在するが、交流のあったインドネシアから伝わってきたということか。他方、「竜宮童子」や「魚女房」内に現れているこのモチーフは、ロシアから中国を経て変形しながら伝わってきたものなのかもしれない。

 

竜宮童子日本

 昔、貧しい柴取りの爺が、売れ残った柴を沼に捨てて、「水神様に差し上げます」と言った。すると水の中から龍神が現れて竜宮城に案内され、厚くもてなされた。帰りに、龍神は鼻水を垂らした汚い子供を渡して、この子供を大事にしなさい、日に一回は なますを食べさせてください、と言った。

 この鼻たれ小僧は不思議な力を持っていて、何か願い事を言うと鼻をすする。するとたちまち願いがかなってしまうのだ。

 こうして爺は大きな家を持つ長者になったが、婆の方は金持ちになると慢心して、汚い鼻たれ小僧の面倒を見るのも嫌になったし、なますを食べさせるのも面倒になった。それでとうとうある日、鼻たれ小僧に「もう充分ですから帰ってください」と言って、家から追い出した。

 追い出された鼻たれ小僧が帰り際にずずっと鼻をすすると、大きな家も財産も何もかもぱっと消えてしまい、爺と婆は元の汚いなりでぽかんと座っていた。



参考文献
『日本昔話集成(全六巻)』 関敬吾著 角川書店 1950-

※「はなたれ小僧さま」の題でも有名な話。
 授かる童子の名は、とほう、うんとく、よげない、あほう、ひょうとく などがある。また、「とてつ」という女の子の場合や、「したり」という婆の場合も有り、中国の『録異記』にある如願の話を思い起こさせる。

 類話によっては、竜宮から迎えに来る使者は大亀であり、その背に乗って竜宮に行き、乙姫に童子を授かる。[浦島太郎]や[竜宮女房]の導入部と同じである。

参考-->「花咲か爺」「ペナンペ・パナンペ



ひょっとこのはじまり日本 岩手県江刺市

 あるところに爺と婆があった。爺は山に柴刈りに行って、大きな穴を一つ見つけた。こんな穴には悪い物が住むものだ、塞いでしまった方がよいと思って、一束の柴をその穴の口に押し込んだ。

 何度も何度も柴を押し込み、とうとう刈り溜めた柴を全部穴の中に入れてしまった。すると、穴の中から美しい女が出てきて礼を言い、中に来てくれと勧められる。入ってみると立派な家があり、座敷には白髭の翁がいた。

 帰るとき、みっともない顔の一人の子供を連れて行けと言われた。

 家に着いても子供はへそばかりいじっているので、ある日、火箸でちょいとへそを突ついてみると、へそから金の小粒が出た。爺の家はたちまち富貴長者となった。

 ところが、欲張りな婆が爺の留守中に子供のへそをぐんと突くと、子供は死んでしまった。外から戻った爺が悲しんでいると、夢に子供が出てきて、

「泣くな爺様、俺の顔に似た面を作って、毎日よく目につく そこのかまどの前の柱にかけておけ。そうすれば家が富み栄える」と教えてくれた。

 この子供の名前はヒョウトクといった。それゆえにこの土地の村々では今日まで、醜いヒョウトクの面を木や粘土で造って、かまどの前の釜男カマオトコという柱にかけておく。所によってはまたこれを火男ヒオトコとも竃仏カマホトケとも呼んでいる。

※口を尖らした奇妙な顔の男の面、ひょっとこの由来話として有名な話。
 宮城県黒川郡の類話によると子供の名はショウトク、囲炉裏で木を焼きながらへそをいじるので、爺がやめさせようと火箸で挟むまねをすると黄金が出た、となっている。ショウトクのへそを火箸でいじって殺したのは隣の欲張り爺さんだ。

参考--> 【金の生る木】【炭焼長者】<雑学孝〜"ひょっとこ"と金の話>



金の魚ロシア

 ある日、爺の網に小さな金の魚がかかった。魚はなんでも願いを叶えてやるから逃がしてくれと頼む。

 魚をただ逃がして帰ると婆が怒り、パンを頼みに行けと言った。仕方なく爺が魚に頼みに行って、帰ると、家に本当にパンがある。味をしめた婆は、次に桶、更には新しい家と次々に頼みに行かせ、今度は奥方になりたいと言い、更には女王様になりたいと願った。

 海は最初は青かったが、爺が頼みに行くたびに灰色に濁っていった。

 しまいに、婆は「神様になりたい」と願った。それを聞くと魚は黙って暗い海に消えてしまった。家に戻ると御殿は消えて、元の粗末なボロ屋になり、婆はボロを着てぽつんと座っていた。金色の魚は二度と網にかからなかった。

※グリム童話「漁師とその妻」(KHM19)の類話。グリム版では、願いを叶えてくれるのはヒラメである。

 類話によっては願いを叶えてくれるのは魚とは限らない。木、切り株、金の鳥が叶えてくれるバージョンがある他、豆のつるを伝って天に昇り、神に願いを聞いてもらうものもあるという。

 日本の沖縄の類話では、山に猟に出かけた爺が金の鳥を見つけ、あまりに美しいので銃で撃たずにいると、鳥が「今後二度と狩をしないなら、一生 衣食住の面倒を見る」と言う。約束して帰ると家が御殿になっていて食べ物も着物も山ほどある。だが慢心した婆は「空を飛びたい」と言い出し、爺がそれを金の鳥に願うと、帰った家に婆の姿はなく、ただカラスが屋根の辺りにいる。

参考--> 「魚と金の靴」「竜宮女房6」「魚女房2




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